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モノに溢れた成熟社会だからこそ、価値あるものしか作らないという誠実なモノづくりの姿勢が、モノを大切にする価値観を育み、ひいては環境にも優しいライフスタイルヘとつながるのだと思う。
そういう意味で、フェラーリのデザイン等で有名な工業デザイナー奥山清行の以下の言葉には深く納得させるものがある。 粗末に扱わずに大切にすることは、「もの」を買ってきて使う場合の徳目である。
この点で私は、「ものづくり」をする人間が、わきまえておかなければならない規範があると考えている。 というのは、「もの」を創造するときは必ず、どこかで同時に破壊行為が行われている。

建築をするときは森で木が切り倒されているわけであり、自動車をつくる陰には、大地を削って鉱石を掘り出し、エネルギーを注ぎ込んで精錬している。 最近では「環境に負荷をかける」という言い方がなされるが、すべて破壊行為にほかならない。
自分の目に入らないところで起きているからといって、「なかったこと」にはならないのだ。 だから、破壊行為を上回るだけの「もの」の価値がなければ、新しいものはつくってはならないのである。
それが「ものづくり」をする人間にとっての規範だ。 このような規範意識を持ち、倫理と志に満ちたモノづくりをする姿勢が、21世紀にも選ばれる企業の条件となるはずである。
「地球温暖化の克服」という夢が持つ可能性TのW社長は、空気を汚染しないというだけでなく、「走行中に空中の花粉やCO2を吸収し健康や環境に優しい」「空気がきれいになる」クルマを開発したいと述べている。 植物が光合成するように、CO2を燃料雲にして酸素を排出する自動車、つまり、走れば走るほど空気をきれいにする自動車をつくりたいというのである。
この理想的な自動車の構想についてジャーナリストのTがTに取材したところ、「具体的に話せることはない」と苦笑されたそうだが、その実現性はともあれ、目指す方向性としては何とも壮大で、夢のある話じゃないかと思う。 今日、自動車にせよ、家電にせよ、戦後の日本の発展を支え、人々に夢を与え続けてきたメーカーの多くは、社会が成熟するなかで、次なるモノづくりの方向性や夢を描きにくくなっているように見える。
しかし、そんなメーカーたちにとって、地球温暖化防止に寄与するモノづくりのあり方を実現することは、新たな指針となるはずだ。 いまの快適で便利な生活を諦めることなく、地球環境と調和したライフスタイルをモノづくりの立場から提案する。

これこそが、20世紀の繁栄を享受してきたメーカーたちが21世紀に実現すべき課題であり、発信すべき夢なのだと思う。 すでに日本にはハイブリッドエンジンやオイルショック以降磨きをかけてきた省エネの技術がある。
それに先進国のなかでは珍しいことに国土の7割近くが森林で占められている。 つまり、CO2の排出を抑制する最先端の技術と、CO2の吸収源である豊かな森林、それを守り育ててきた知恵や文化を有する世界的にも珍しい国なのである。
さらに、京都議定書が締結された国という象徴性もあるのだから、少なくとも、潜在的には地球温暖化対策のフロントランナーとしてのポジションにいるといっても過言ではない。 これだけのコンテンツが揃っているのだから、日本という国家それ自体をエコ・ブランディングしようと考えないほうがどうかしている。
排出抑制のための最先端のテクノロジーや造林・育林の技術は、海外にも輸出可能な、日本という国家の立派なPIとなるだろう。 世界中から評価されている繊細な日本人の美意識や文化、アニメや漫画に代表される豊かでチャーミングな表現技術は、魅力的なVIを築くうえで活用できるだろう。
ただし、暖昧なのは、CIに相当する部分である。 エコ・ブランディングのためには、地球温暖化対策の先進国家として世界に貢献するという明確な理念とメッセージを発信していくことが必要となるだろう。
「世界に貢献するエコ大国」。 これが、これからの日本が目指すべき姿ではないだろうか。
少なくとも、アニメや漫画といったヴァーチャルなものに頼って国のイメージ作りをするよりはずっとリアルで、クールだと思う。 そして、エコ大国として「安心と信頼」「夢と憧れ」「一貫した世界観」を人々の心のなかに根付かせることができれば、21世紀において尊敬され、選ばれる国家となるだろう。

日本の社会から夢が失われてしまったというのは簡単だが、「地球温暖化の危機を克服するための技術や社会システムの実現」という、努力するに値する壮大な夢が目の前に存在するではないかと思う。 そして、その夢の実現に向けて努力し、貢献する個人、集団、企業、国家が、21世紀に最強のブランドカを有する主体となるのである。
地球温暖化と企業経営の関連をどう考えるか。 温暖化防止対策自体を無視する姿勢、総量主義の規制措置に徹底的に反対する姿勢、規制の方向が見極められないとして取組みをひとまず棚上げする姿勢。
こうした対応ももちろん企業の選択肢の1つではある。 一方で、規制が強化されることを織り込んで事業リスクと事業機会について包括的なシナリオを作成する姿勢、あえて穏健な規制を受け入れてコストの最適化を図る姿勢、地球温暖化に伴うリスクの観点からある事業領域から撤退する姿勢、地球温暖化に伴う機会の観点から技術開発に経営資源を集中させたり、ある事業領域に進出する姿勢。
これらも企業のとりうる選択肢である。 企業側の論理はそれほど複雑なわけではない。
「地球温暖化防止に取り組むことがなかなかマーケットに評価されない」というのが、多くの担当者の悩みではないだろうか。 そこで本節では、消費者は、取引先は、株主は、どこまで意識が変わってきているのか、そのことを見ていくことにする。
地球温暖化の進行は、今後も避けられない。 だとすれば、ステークホルダーの意識の変化の方向は不変だといってよい。
問題は、いつそれがマーケット支配的な意識として表れてくるかということになる。 欧州委員会が2007年7月に公開した世論調査結果が興味深い。
「EUの交通政策に関する態度調査」と題されたこの世論調査では、「陸上交通はEUの温室効果ガス(GHG)発生の5分の1を占めており、1990年から2004年の間に26%もその総量は伸びている。 この傾向を逆転させるためにはどうしたらよいか」を尋ねている。
最も回答が多かったのは「低公害車の販売だけを認める」で35%、次に回答を集めたのが「税制優遇を通じて高効率の車の購入を促進する」で30%、これに「よりよい情報提供を通じて高効率の車の購入を促進する」(16%)が続き、「車の使用制限を導入する」という回答ですら11%を集めた。 「低公害型の交通(低公害車、公共交通、低公害燃料など)を使うのに、どの程度追加的な費用を負担する準備がありますか」という設問に対しては、45%の人が「10%高までなら払う」と答え、「10%以上でも払う」という人も9%いて、「いま以上には支払わない」(41%)を上回る結果となった。
当然の命題ではあるが「消費者が変われるのであれば企業は変わる」。 逆にいえば、「消費者が変わらないので企業は変われない」のである。

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